今回読んだのは唐辺葉介先生の冷たいオゾンです。
エロゲに詳しい人にはそれなりの知名度がある作者なのかな。別名義ではあるけど。
一応、出版社的にはライトノベルなのでラノベ紹介としていますが、内容はあまりラノベっぽくない作品です。
個人的には読んでいて、何故かカズオイシグロの「私を離さないで」を読んだときのことを思い出しました。
読了後のなんとも言えない感情がそう思わせたのかもしれません。
冷たいオゾン/唐辺葉介
あらすじ
やがて現実で出会う二人は、ずっと夢の中で繋がっていた――
お互いの感覚を共有してしまう奇病を患った脩一と花絵。病を通じて彼らは出会い、やがて惹かれ合っていく。それはどちらの感情だったのか。心の融解を感じながら、二人が辿り着く未来とは。つめたく儚い人々の物語。
引用元:富士見L文庫 © KADOKAWA CORPORATION
淡々と描かれる残酷な現実
あらすじにもある通り、登場人物は脩一と花絵の二人です。
構成としては「脩一の人生→花絵の人生→奇病を患って出会った二人の触れあい」といった感じです。
そのため、「病を通じて彼らは出会い、やがて惹かれ合っていく」の部分までがそれなりに長いので、肩透かしを食らう人もいそう。
しかも、この二人の人生がまあ辛い。両親からの過剰なプレッシャーだとか、レ〇プだとか、監禁だとか……何処かで見たことがあるような鬱展開がこれでもかと詰め込まれています。
これが三人称で淡々と描写されていくので、途中で読むのが辛くなって読むのを止めてしまいそうになりましたね。
脩一の方は母親と和解しましたし、将棋という自分の夢に向かって突き進む感じでいくらかマシなんですが、花絵の方は本当に酷い。救いが殆どありません。強〇した相手からの手紙とか吐き気がするよね。
互いの人生が交差していき、二人がどのように生きていくのかを描写するためには必要な土台なんでしょうが、キツイ展開を繋ぎ合わせたような感じなので、前半はあまり面白くはなかったかな。
アンナ・メアリー症候群という架空の病気
本作ではアンナ・メアリー症候群というお互いの感覚を共有してしまう架空の病気が出てきます。
あまり病気っぽくないけどね。
徐々に二人の感覚が一致していき、終いには互いに同じ動きしかできなくなります。
作中では知能等も徐々に衰えていくことが示唆されています。
ここで面白いというか興味深いのが、二人の人生の向く方向が逆転していく所ですよね。
脩一は将棋という夢に向かっていたし、それを叶えるための力も備わっていたのに、病気のせいで徐々に力が発揮できなくなります。
逆に花絵はそれまであまりにも過酷な出来事ばかりでしたが、療養のためか穏やかな日々を生きていけるようになっています。
幸から不幸へ、不幸から幸へ、二人が向き合うような感じになっているのが興味深いですね。
徐々に同じところへ二人が向かっていく感じがわかる構成なのかなと思いました。
二人の未来は決して明るくはないけど
最後の辺りで、二人は自分と同じアンナ・メアリー症候群の患者と会います。
二人は感覚を共有しながらもほんの少しではありますが、全く同じではない行動がとれるようになっており、もしかしたら二人に待ち受ける未来も絶望一辺倒ではないことが示唆されています。
ラスト前の竹藪での二人の会話は直接的な感情の描写がなく、色々な考察ができそうです。一体、二人はなにを思ったのか……それを考えると、なんとも言えない気持ちにはなりますね。
最後はわかり切った結末ではあるのですが、多少の希望は用意してくれています。
それがこの独特な読後感を生み出しているような気がしますね。
まとめ
人を選ぶ作品ではありますが、余韻のある作品が好きな人には刺さりそうだと思いました。
個人的には同作者のPSYCHEという作品が読みたいのですが……高いし、電子書籍にもないしで読めないんですよね~。
